帰りのホームルームが終わると、私はひたすら深呼吸を繰り返していた。
「どうかした?」
 桃華さんに声をかけられ振り返る。
「なんでもないよ」
「なんでもなさそうじゃないから声をかけたんだけど……。具合、悪い?」
「あ、体調は本当に問題なくて――これから、秋斗さんのところへ行くの」
「秋斗先生のところ?」
「そう……。私、秋斗さんにはまだ記憶が戻ったことを伝えてないから」
「…………」
「少し緊張しているだけだから大丈夫」
 私はそう言うと、かばんを持って教室を出た。