「それだけは嫌だったの。海斗くんの手も、ツカサや秋斗さんの手も放したくなかったの。それと同時に考えたこと。ツカサか秋斗さんのどちらかを選ぶことになったら、どちらかひとりの手を放すことになる気がして……だから私――」
「そっか……それが御園生の出した答えだったんだ」
 私はコクリと頷いた。
「でも、まだ自分の気持ちの制御ができなくて困ってる。ツカサを見ると、会うと、心が忙しなくドキドキし始めるし、どうしたらいいのかわからなくなる。さっきも顔の火照りがどうしたらおさまるのか本当に必死で……」
 佐野くんはひとつ小さく息を吐き出した。
「御園生の選択は俺には納得しがたい。でも、困ったらいつでも呼んで。電話でもメールでも。話を聞くくらいならできるから」
「……佐野くん、ありがとう」
 少しだけ気持ちが楽になった。
 秋斗さんに会いに行く前に、ほんの少しでも心の態勢を整えることができて良かった――。