「で、頭痛は?」
「今のところは大丈夫みたいです。でも、またあの痛みが襲ってくるかと思うと怖い……。頭が割れるんじゃないかと思いました」
「そうね、そういう頭痛だわ。しばらく司のマッサージ受けるのね。そこらのマッサージ師よりも腕はいいわよ。それから、ひとりで起きることができるなら秋斗のところへは行かなくていい」
 そうだ、そんな問題も残っていたんだ……。
「来週から学校に復帰することを考えると、一時間起きたら一時間休む、それを繰り返しなさい。無理はだめ。でも、横になってばかりいても起立性低血圧が悪化するわ。それから、できるのなら足のストレッチは再開すること」
「はい」
「今は? 起きてみる?」
「はい、起きてみます」
「手、貸す?」
「いえ、ひとりで……」
 少しずつ上体を起こしてみたけれど、際立った吐き気はない。それは低血圧発作が起きていない証拠。
「これくらいならなんとかなるかも……」
「今日は気晴らしにピアノでも弾いていたらいいわ。勉強するならちゃんとカロリー摂りなさいよ?」
「はい……でも、秋斗さんは迎えに来ちゃうでしょうか」
 それはどこか後ろめたさと恐怖感が入り混じった感情で、なんとも言いがたい。
「秋斗には私から連絡入れるから心配しなくていい」
 これは甘えてもいいところだろうか……。
「翠葉、今回のは秋斗の自業自得ってところよ。あんまり気に病むんじゃないの」
 そんな話をしていると栞さんがやってきた。