光のもとでⅠ

「スイハ――潰れんなよ」
 私は背中でその言葉を受け止め、暗い廊下をコツコツと無機質な音をさせて歩いた。
 大丈夫、大丈夫、大丈夫――。
 自分の気持ちさえぶれなければ大丈夫。

 唯兄が車で迎えに来てくれるから、マンションまでは十分とかからず帰れる。
 七時にはゲストルームに着くだろう。
 鼻歌を歌いながら運転する唯兄に、
「お母さんは?」
「まだ現場。明日には帰ってくるって言ってた」
「そっか……夜、電話しようかな」
「……報告?」
「うん……きっと早くに知らせたほうがいいと思うから」
 唯兄はちらりと私を見て、すぐ前方へ視線を戻した。