光のもとでⅠ

「ほんっと律儀だな? そんなに秋斗のことが心配か?」
「……心配というか、私が記憶をなくしたのは秋斗さんのせいじゃないってわかってほしいだけです。だって、それで誤解されるのはひどく申し訳ないから」
「なんつーか、難儀な性格してんな? でも、翠葉ちゃんらしいよ。起きることひとつひとつ真正面から向き合うところがさ。……でも、それで壊れんなよ?」
 昇さんは真面目な顔つきになる。
「つまり、今回の出来事はさ、自分を追い詰めすぎたから記憶をなくしたってことだろ?」
「違いますっ。私は自分から逃げただけでっ――」
「そういう見方もできる。でもな、俺が言ったような見方だってできるんだよ。自分を追い詰めてもいいことないぞ? わかってると思うが、ストレスは不整脈にいい影響は与えない。自分を追い詰めすぎると身体が悲鳴をあげる。そのことだけは肝に銘じておけ」
 昇さんは注射器を持ち直すと治療を再開した。