私は何度この目を見てきただろう……。
 そして、何度この目に救われてきただろう。
「そうだね……。記憶が戻っても何も変わらない。何も、変わらないよね。……ありがとう」
「……記憶、戻ってどう?」
「……どうって……良かったよ。すごく大切な記憶だから、思い出せて良かった。あ、もう病院へ行かなくちゃ。紅葉を見に行く日は後日決めるのでもいい?」
「それなら、今夜電話する」
 私たちはその場で別れた。
 ツカサは弓道場へ向かい、私は桜香苑へ向かう。
 まるで、これからの分岐点のように思えた。
 私は、周りの景色を楽しむ余裕もなく病院まで歩いた。