「つ、ぎ……?」
「そう、次。一度キャンセルしたらその約束がなかったことになるとでも? そんなの延期に決まってるだろ」
「そ、そっか……。ツカサ、あのね、私、話さなくちゃいけないことがある」
「今でいい。今、聞く」
 ツカサの顔から笑みが消えた。
「あの、ね……私、記憶が戻ったの」
 言葉を発しているというのに、窒息するような錯覚に陥る。
 でも、そんな「感じ」はツカサの言葉によって吹き飛ばされた。
「おめでとう。良かったな、記憶が戻って。でも、だから? だから何?」
「っ……!?」
「記憶がなくなったときにも言わなかったか? 俺は翠の記憶があろうとなかろうと何も変らない」
 射抜かれてしまいそうなくらい、意思のある強い目だった。