「私はパレスがお嬢様の『逃げ場』になれたことを光栄に思っております」
「え……?」
「窮地に立たれたときに思い出していただけることほど嬉しいことはございません」
 木田さんの笑顔と言葉は魔法だと思う。
 心をあたためてくれたり軽くしてくれたり――大好き。
「また来ます……」
「はい、お待ちしております」
 私は時間どおりに着いた特急列車に乗り、藤倉への帰途についた。