だって、ふたりのどちらとも失いたくないんだもの……。
「好き」という気持ちは放棄する。
 だから……どうか、私からふたりを取り上げないで。
 これ以上の欲張りは言わないから――。

 部屋に戻ると手早く帰り支度を済ませた。
 備え付けの電話でフロントへかけると、電話に出た人はすぐ木田さんにつないでくれた。
「藤倉に帰ろうと思うのですが、特急列車は駅に行ったら普通に切符が買えるものでしょうか」
 私は恥ずかしいくらいに何も知らない。
 ここに来るとき、切符を買ってくれたのは木田さんだった。
 私はホームにある券売機が今まで見たことのある券売機とは違うと思いながら側にいただけ。