朗元さんはコーヒーを飲んでいた。
 そして、今は木田さんが私にお茶を淹れてくれている。
 きっと何を言わずともハーブティーが出てくる。
「失礼いたします」
 目の前に置かれたカップに目を瞠った。
「約束をしたじゃろう?」
 朗元さんがにこりと微笑む。
 私の目の前に置かれたカップは、以前デパートで見ていた藤色のコーヒーカップのマグカップバージョンだったのだ。
「いつどこで会えるかわからんからの、常に携帯しておって良かったわ」
 私はびっくりしすぎて言葉が出てこない。
「ファン一号さんへのプレゼントじゃ」
「ありがとうございます」
 かろうじて出てきたのはありきたりな言葉だった。