「私は朗元さんの作品が好きで、数年前から兄への誕生日プレゼントにコーヒーカップを買っていたんです。今年も同じようにカップを買いにお店へ行ったとき、偶然お会いすることができて……」
「ファン一号さんだそうですね」
「はい」
 まだお昼には少し早い時間ということもあり、レストランに人は少ない。
 結婚式の打ち合わせにきているのかな、と思う人たちが二組いるだけ。
 私が案内されたのは、前回来たときにみんなでご飯を食べた個室だった。
「お待たせしてすみません」
 頭を下げると、朗元さんは私の手を取る。
「うむ、きちんとあったまってきたようじゃの」
 目を細め、顔をくしゃりと崩した。
「さっきよりも顔がすっきりして見えるのは気のせいかの?」
 私は朗元さんに促されるまま席に着いた。