何を考えなくちゃいけないのかもはっきりさせることができないほどに。
 唯兄にそう言われたのに、差し伸べられた優しい手を突っぱねてしまった。
 あのときに話せていたら、今こんなことにはなっていなかったのかもしれない。
 ぎゅっ、と縮こまると、朗元さんに腕をさすられた。
「そんなに力むこともなかろう。ゆっくりで良いぞ? 年寄りの利点は時間がたんまりあることじゃ」
 にこりと微笑む表情がとてもあたたかく感じた。
 さすられている腕もしだにあたたかくなってくる。
 力が少し緩むと手を握られた。
 手袋の上からでも朗元さんのぬくもりが伝わってくる。
 前に会ったときもこうやって手を握ってくれた。