ぼんやりと思う。
 この水蒸気の結晶たちはいつまで残っているのかな、と。
 息を殺し、そんなことを考えながら見つめていた。
 考えることは山ほどある。
 でも、心と頭が拒否をする。
 時間は無限にはないのに、今こうしている間にだって刻々と刻まれているのに――。

 九時を回った頃、木田さんが部屋まで迎えに来てくれた。
 私はコートのポケットに携帯とピルケース、ハンカチ代わりの手ぬぐいだけを入れ手ぶらで部屋を出た。
「森の小道はいつもに増して滑りやすくなっております。足元には十分お気をつけください」
「はい」