しんと静まり返ったリビングから寝室へ戻る。
 木田さんが昨夜淹れてくれたお茶をカップに注いだ。
 ほわりと湯気が立つほどに、まだそれはあたたかかった。
 ベッドの上で体育座り。
 腕で膝を抱え身体を丸める。
 髪で視界を遮り、もっと小さくなれたらいいのに、と思う。
 小さく小さく――とても小さくなって人の目にも留まらないくらい小さくなれたらいいのに。
 ほんの少しだけ頭を上げ、視線を窓の外に移す。と、霜が降りていた。
 氷の貝柱はとてもきれいに鮮明に映る。
 こんな状況なのに、私の世界から「色」は失われていなかった。
 石の上や緑の草にも薄っすらと雪化粧のように霜がついていた。
 とてもきれいだし、カメラもかばんの中に入っている。
 でも、どうしても写真を撮る気にはならない。