どうしよう……。
 申し訳なさで胸がいっぱいになる。
 木田さんはてきぱきと蓋側に半分を取り分け、きれいに盛り付けてくれた。
 それとウィステリアホテルのマークが入ったお箸をを私の前に置くと、
「さぁ、いただきましょう」
 木田さんは半分になってしまったお弁当箱を見て満足そうな顔をする。
「須藤くんは食べる人のことをきちんと考えて料理するシェフですねぇ。お嬢様が食べることはもちろん、私が帰りに車内で食べることをよく考慮したメニューです」
「え……?」
「あたたかくても美味しくいただけ、冷めていても美味しくいただける。これはそういう料理ですよ」
 木田さんは嬉しそうに口元を綻ばせた。
 九種類の料理を私たちはゆっくりと味わい楽しんだ。
 そして木田さんが用意してくれたミネラルウォーターで薬を飲むと、車内アナウンスが流れる。
『まもなく白野(しらの)、白野駅に停車いたします』
「ちょうどよかったですね。お嬢様、白野で降ります」