光のもとでⅠ

「さぁ、なんのことでしょう? 老いぼれにはさっぱりわかりません。――若槻さん、時に強行突破が否めないこともあるのですよ」
 木田さんはクスクスと笑いながら唯兄との通話を切った。
「それでは、今度こそご両親へおかけください。話は私がいたしましょう」
 私がリダイヤルから番号を呼び出すと、「お貸しください」と携帯を取り上げられた。
「私、ブライトネスパレスの総支配人を務める木田と申します。ただいま、お電話にお時間いただけますでしょうか?」
 木田さんの喋る言葉はとてもかしこまっているのに、この声で話されるとそこまで硬くは感じない。
 不思議に思いながらその声を聞いていた。