光のもとでⅠ

 ホテルを出たいきさつと、今ここにいるいきさつなら話すことができる。
 でも、それはいきさつであって理由ではない。
 木田さんは私が話しだすのを辛抱強く待っていてくれたけれど、私はいきさつしか話すことができず、理由を述べることはできなかった。
「……何かお悩みですか?」
「……考えなくてはいけないことがあります。でも、本当はあまり直視したいことではなくて、それでも考えなくちゃいけなくて――」
 たぶん、今の私はどうしようもなく情けない顔をしているに違いない。
 恐る恐る顔を上げ木田さんの目を見ると、木田さんは不思議そうな視線を返してきた。