光のもとでⅠ

「いえ……携帯がつながったらなんだかほっとしてしまって……。安心して力が抜けちゃったみたいです」
 極力心配をかけないように――そう思って答えた。
「さようでしたか」
 木田さんは穏やかな笑みを浮かべた。
「ですがお嬢様、コンクリートの上はさぞ冷えることでしょう。あちらの待合室へ移動しましょう。あそこなら風も防げます」
 紳士的に差し出されたしわくちゃの手を頼りすぎなように、細心の注意を払って立ち上がる。と、十メートルほど先にある待合室に向けて歩きだした。
「お嬢様はなぜこちらにいらしたのですか? 今日はホテルでお仕事をなさっていると静様からうかがっておりましたが……」
「あ……お仕事はしてきたのですが――」
 なんと説明したらいいものか……。