光のもとでⅠ

「あの、駅名はわからないのですが――でも、同じ駅にいると思います」
 木田さんがこの駅に降りたのを目にしたわけではない。
 ただ、携帯から聞こえるアナウンスが同じというだけ。
「木田さんの携帯から聞こえてくるアナウンスは、今私が聞いているものと同じです」
 木田さんは耳を澄ませているのか、少しの間沈黙した。
『えぇ、そのようですね。お嬢様は今どちらにいらっしゃるのでしょうか』
「電車を降りたホームの――エレベーターの前にいます」
『では、今からそちらへ参りますので今しばらくお待ちください』
 そう言われると通話は切れた。