「不注意すぎ」
 きっぱりと言いきられて、ごめんなさい、と思う。
「翠葉くん、ここでかまわないよ。あぁ、そうだ。これは君にあげよう」
 と、さきほどの魔法のアイテムを手に握らされた。
「うまく活用するといい」
 ニヤ、と笑うとスタスタ歩いていってしまい、あっという間に廊下の先に見えなくなった。
「それ何?」
 司先輩と海斗くんに覗き込まれる。
 私はそのふたつの視線から隠すように手に握りしめ、「秘密兵器」と答えた。
 食事中にキスマークのことを訊かれたらどうしようかと思ってた。でも、誰もその話を振ってくる人はいなくてほっとした。
 ほっとしたと思うのに、学校の話を聞いてもまったく関係のない話をしていても、気づけば身体に力が入っている。
 そんな自分に気づきつつ、どうしたらいいのかはわからずにいた。