いつもと変わらず口調は穏やかなのに、静さんが一歩近づくたびに大きな壁が迫ってくるように思えた。
 私は恐る恐る口にする。
「静さん、それは――つながりを絶つというのは海斗くんやツカサ、秋斗さんとのつながりもなくなる、ということですか?」
「そうだ。ヒヨコどもは不本意だろう。海斗においてはひどく傷つく恐れもある。が、それも仕方がない。ヒヨコどもはかわいいが、碧と零樹の宝を危険にさらすなど見過ごせないからな。翠葉ちゃんを守るためなら徹底的に関係を絶つ」
 静さんの目は厳然たる事実だと言っていた。
「選択権は君にある。リメラルドを降りてもらいたくはないが、替え玉は用意してある。大人の事情は考えなくていい。自分のことだけを考えて決めてほしい」
 私は膝の上に置いてあった両手をぎゅ、と握った。