海斗くんから毒物や薬物、誘拐といったことは聞いていた。
 でも、命を狙われるともなれば、手段はそれだけではないということを知った。
 そして、私に起こり得るのは直接命を狙われることよりも、交渉時の材料として使われる誘拐であることも。
 海斗くんを疑っていたわけじゃない。
 でも、心のどこかで「まさか」と思っていたことは否定できそうにもなかった。
 そのくらい、今私は衝撃を受けている。
「怖い?」
 私は言葉にはできずコクリと頷いた。
「じゃぁ、やめる?」
「え……?」
「リメラルドもやめて、オーナーの庇護下に入るのもやめる?」
 今、私は唯兄に何を訊かれているのだろう。
 必死で頭を働かせようとしていると、この場にはいなかったはずの人の声が響いた。