鏡に自分を映し、恐る恐る背後にある鏡へと角度を変えていく。鏡は真実を映し出した。
 目に飛び込んできたのはくっきりと浮かぶ赤い痣。これは一週間では消えないだろう。
 再度パタリ、とベッドに突っ伏す。
「ううむ……かなりくっきりとつけられたものだ」
 追い討ちのような一言を恨みがましく思っていると、首のあたりにひやりとした感覚があった。
「よし、これで大丈夫」
「……え?」
 身体を起こすと、リップクリームのような形状のものを見せられた。
「コンシーラーという化粧品だ。たいていはソバカスやシミを気にする女性がファンデーション前に使うアイテムだが、こんな使い方もできる」
 言ってはニヤリと笑う。
「もう一度鏡を見てみたまえ」
 言われて鏡を覗くと、くっきりと赤い痣が浮かび上がっているところはなくなっていた。
「……魔法?」
「世に言う、化粧という魔法だな。よし、これで問題はなくなった。夕飯も食べれるというものだ」
 あまりにも豪快に、そして嬉しそうに夕飯のことを口にするから少しおかしくなって笑った。
「うむ、君は笑っていたほうがかわいいと思うぞ?」
「……いつも笑っていられたらいいんですけど」
 言葉を濁すと、
「因みに、それをつけたのは翠葉くんの想い人か?」
「……そうなんですけど、どうしたらいいのかわからないことが多くて――怖い」
 言葉に詰まってしまうと、ポンポンと頭を叩かれた。