厳つい身体には不釣合いなほど柔和な笑顔を向けられる。
 まるで仏様みたいだ。
「御園生、翠葉、です……。あの、お邪魔にならないように気をつけますので、よろしくお願いいたします」
 何を話したらいいのかわらかなくて、月並みな言葉を並べたに関わらず、ところどころから拍手をいただいた。
「以上、作業に戻っていいぞー」
 太く通る声がそう言うと、ブースの中はまた慌しく動き始めた。
「ここはあと五分もするとミーティングタイムになるから、若槻に地下スタジオを案内してもらうといい」
 澤野部長と目が合うと、ぎょろっとした目が少し細まった。
 そして、小さな声で「下にはスタッフが揃っています」と追加される。
 私は園田さんに促されるままに広報部のブースをあとにした。
 地下で誰が待っているとも知らずに――。