どのくらいの間同じ体勢でいただろう。ずっと首を押さえて蹲っていた。すると、コンコン――少し強い調子でドアがノックされた。
 栞さんのノックとも蒼兄のノックとも違う。かといって司先輩でもない。
 海斗くん……?
 不思議に思っていると、もう一度ノックがあった。
「はい……」
「自分、対馬美鳥と申す者だが……。翠葉くん、入ってもいいだろうか?」
 あ……さっきの人?
「え、わ、あ……」
 話したことがない以前に会ったこともない人だ。それがどうして……!?
「ここから見て察するに、中は暗闇であろう?」
「……はい」
「じゃぁ、入るとすることにしよう」
 どうしてっ!?
 ドアが静かに開き、女の人が入ってきた。
 身長は桃華さんと同じくらいなのに、桃華さんよりも大きな印象を受ける。
 逆光で顔のつくりはよくわからなかった。
 ドアを閉めると再び暗闇に包まれる。
 窓の外から差し込む、表通路のわずかな光が美鳥さんの顔を照らしていた。
 彫りの深い、はっきとした顔立ちの人。"きれい"よりも"格好いい"。その言葉しか浮かばなかった。