「「キスマークっっっ!?」」
 蒼兄と海斗くんの声が見事に重なり、司先輩は目を見開いていた。
「やだっ、見ないでっ。みんな部屋から出ていってっっっ」
 首を手で押さえ、その場に蹲る。恥ずかしくて、顔を上げてなんていられなかった。
「……悪い、ふたりとも先に出ててもらえる?」
 蒼兄の静かな声が聞こえると、ドアがパタンと閉まる音がした。
「蒼兄も、やだ……」
「……翠葉、ごめん。でも、やっぱりひとつだけは確認させて。ほかは? ……何も嫌なことされなかった?」
 キスマークをつけられたのはここだけだ。それにほかって言われても……。たくさんキスをされただけ。それは別に嫌なことではなかった。
 自分の中で確認を済ませ口を開く。「これだけ」と。
「そっか……。ならいいけど、栞さん呼ぶ?」
「……ううん、いい。今、ご飯の用意をしていると思うし、栞さんが来てくれてもこれは消せないのでしょう?」
 蒼兄は最後の問いに答えてはくれなかった。
「じゃぁ、とりあえず俺もリビングへ行くけど……。何かあれば携帯鳴らしてくれればいいから」
 と、部屋を出ていった。