「え……?」
「……おまえ、その顔泣いてただろ? 何があった? 秋兄の仕業っ!?」
 矢継ぎ早に聞かれ、驚いて身を引くと、
「海斗ストップ……」
 と、猪突猛進気味の海斗くんを司先輩がセーブしてくれた。
「あの、えと……その、キャパシティオーバー……かな」
 司先輩に押さえられたままの海斗くんに答えると、
「襲われたりしなかったっ!?」
 お、襲うっ――!?
 その言葉にパタリ、とベッドに突っ伏す。
 蒼兄は「ははは」と乾いた笑いを発していた。
 そして、次に聞こえてきた声に絶句する。
「実際のところ、どうだったの?」
 そう口にしたのが司先輩だったからだ。
 すると、今度は海斗くんの態度が百八十度変わった。
「司……こういうことはデリケートな問題だからさぁ、やっぱ言えないと思うんだよねぇ……」
 海斗くんは気を遣ってくれているんだろうか、それとも……なんなんだろう。
 わけのわからないことが多くて頭の中は手のつけようがないほどにごった返している。
 ベッドに突っ伏したままでいると、蒼兄の手が首元に伸びてきた。
「翠葉、首どうした?」
 と、髪を取られる。
「え?」
 と、髪の合間から蒼兄を見ると、部屋にいた三人の視線が私の首に注がれていた。