私は続けてメール作成画面を起動させた。
 鎌田くんのアドレスを呼び出したそのとき、目には見えないものがよぎった。
 通り過ぎたものは香り……。
 顔を上げた次の瞬間、ふぁさっと肩に何かがかかる。
 な、に……?
 振り向いたそこには秋斗さんが立っていた。
 肩にかけられたのはジャケット。
「電話なんて珍しいね? でも、今日は昨日より十度も低い。その格好じゃ風邪ぶり返しちゃうよ?」
 秋斗さんはにこりと笑って白衣のポケットからハンカチを取り出した。