『……なんか嬉しいな』
「え……?」
『あの頃、御園生って学校の中のもの何も見ないようにしてる気がしてた。でも、その視界にちゃんと入れてたことが嬉しい』
 鎌田くんの声が少し鼻声になった気がした。
『お互い新しい学校でいい仲間に出逢えたんだから、高校生活楽しもうね』
「うん」
『……とは言っても、俺はもうあと一年ちょっとしか残ってないけど』
 鎌田くんがおどけたように笑うから、私もつられて笑った。
「そうだね。同い年だけど一年先輩になっちゃったね」
『あ、そのことなんだけど……』
「ん?」
『滝口先輩も一緒にいた友達も、御園生が一年留年してるの気づいちゃったんだ』
 ひどく申し訳なさそうな声だった。