光のもとでⅠ

「女性であの筋肉、俺負けたかも」
　ポツリと零したあと、
「翠葉は落ち着いたのか？」
　と、声をかけられた。
「少し落ち着いた、というよりは中断しただけかな。もう、頭がおかしくなりそう……」
「……すでにおかしいから、それ以上おかしくなるのはやめてほしいんだけど」
　司先輩に真顔で言われた。
「……それは嫌みですか？」
「いや、真面目に」
　その返事のほうがいただけない気がする……。
　司先輩の中で私っていったいどんなふうに思われているんだろう。
　少し不安になるのは仕方がないと思うの。
　そこへ、「ただいまー！」と元気な海斗くんが帰ってきた。
「栞ちゃんっ、今日のご飯何っ？」
　玄関を開けてすぐの質問がそれだった。まだ玄関でガサゴソ音がしているから、きっと靴でも脱いでいるのだろう。
　出迎えに出てきた栞さんが、
「おかえりなさい。今日はハンバーグよ」
　と答えると、「やりっ！」と元気良く飛び跳ねて部屋に入ってきた。
「翠葉無事っ!?」
　入ってくるなりこんどはそんな言葉がかけられる。