光のもとでⅠ

「会ってないの?」
 会ったといえば会ったけど、桃華さんは違うことを言ってる気がする。
 今日もマスクをしていてよかったと思った。
 桃華さんは、私の目だけを見て「知らない」と認識したようだ。
「おかしいわね? 昨日、梅香館の帰りに佐野と会ったんだけど、佐野が藤宮司に翠葉の小テストの話をしたらしくて、それを聞いたら部活休むの即決な感じだったって言ってたわよ?」
 思わず口元を押さえそうになった手を必死で留めた。
「ズル休みのネタにされたらたまらないわね? 文句はちゃんと言ったほうがいいわよ? で、何がわからないの?」
 桃華さんはすぐに教科書とノートに視線を移した。
「あ、うん……これなんだけど」
「この漢文は……」
 桃華さんはとても丁寧に教えてくれた。