会話をどこに着地させたらいいのかわからないでいると、玄関で音がした。
 ガチャガチャ、という音が何度となく響き、部屋にいた四人は顔を見合わせ玄関のほうへ目を向ける。
 この部屋に出入りできる人間ならドアノブをガチャガチャとさせることなく入ってこれるはずなのだ。
 このマンションではエントランスに入る際に指紋認証をパスし、五分以内に自宅のドアにたどり着き、再度指紋認証を通せばロックは解除される。たとえ五分以上が経過してしまっていたとしても、指紋認証に追加して暗証番号を入力すれば開けることができる。
 このマンションにおける物理的な鍵というアイテムは、より厳重にするために備わっているにすぎない。そして、現時点でこのゲストルームは指紋認証と暗証番号のみでパスできる仕様となっている。
 ……誰?
「俺が出ます」
 蒼兄が立ち上がると、
「翠葉ちゃん、大丈夫よ。このマンション、変な人は入ってこれないから」
 そう言うと、栞さんも蒼兄に続いて部屋から出ていった。