けど、記憶が戻ってから気になって仕方のないことがひとつ――。
 それは秋斗さんの「立場」。
 私が記憶をなくした理由は秋斗さんを怖いと思ったからじゃない。
 確かに、泣いてしまうほどに秋斗さんを怖いと思った。
 でも、それが理由ではない。
 秋斗さんひとりが悪者のように見られるのが耐えられなかったからだ。
 とても仲の良かった人たちが、仲違いするような状況を自分が作り出してしまったことに耐えられなかったから。
 私がいけなかったのに……。
 私がわがままに人を遠ざけたり髪を切ったりしなければ、あんなことにはならなかった。
 全部私がいけなかったのに――。