私は携帯を取り出し、静さんに連絡を入れた。
 携帯はすぐにつながり。
「翠葉です。今、お時間よろしいですか?」
『あぁ、大丈夫だよ』
「あの、ホテルにお伺いするの、今週の土曜日になってしまうのですが、大丈夫でしょうか」
『あぁ、大丈夫だ。土曜日ということは午後だね?』
「はい。一度マンションに戻って着替えてから伺おうと思います」
『わかった。あとで若槻に連絡をしておくから、その日は若槻に送ってもらうといい』
「……え?」
『姫君、お忘れかな? 今は自宅で仕事をさせているが、若槻はもともとうちのホテルの広報部に籍を置いている人間だ』
「あ……」
『若槻もプロジェクトスタッフの一員だから、そんなに緊張しなくていいからね』
「は、い……」
 すでに声が硬くなっている私を静さんはクスリと笑った。