光のもとでⅠ

 車に乗ると、いつもより数段荒い運転でホテルへの道を走り出した。
「ねぇ、なんでそんなにイラついてんですか? 部屋から閉め出したから?」
「……複雑な心境なんだよ」
 複雑ねぇ……。俺の心境も複雑なんですが……。
 秋斗さんの複雑とリィの複雑。どっちが複雑極めてるのかな。
 そもそも、秋斗さんの複雑ってのは性欲の問題じゃなくて?
 リィのはなんだか色々と入り混じっていそうで想像もつかない。
 何もわからないところに色んなものを放り込まれて、分類ができていないうえで物事考えてるっていうか……。
 パソコンのハードに整理されてないデータをばかすか入れられて、どこになんの情報があるのかわからない状態、かな?
 しかも、それをやってるのが俺と秋斗さんな気がしてならないんだけど……。気のせいであってほしい……。
 隣で運転する秋斗さんは珍しく眉間にしわを寄せていた。
 相当我慢してるんだろうけど、でも、リィ相手じゃもっと我慢しないといけないんじゃない?
 今押したら、あの子は間違いなく引く。力技は通用しない子だ。それから駆け引きも……。
 リィの不思議なところは自分っていう基準がきちんとあるところ。
 わからないって悩んでいるように見えるけど、実際はわからないことに対してもしっかりと自分目線で物事を考えてる。
 そのうえで、自分に可能か可能じゃないかの振り分けをしている気がする。
 だから、今は押し時じゃない――。
 それを肌で感じるからイラつくのかな?