光のもとでⅠ

 なんだろうな……。
 すぐにでもゲストルームへ帰したほうがいいとわかっているのに、この手を放したくないって……。
 俺は今日二度目の名残惜しさを感じていた。
 その思いを決別するように手に少し力をこめる。
「夢じゃないから……。だから、何かあってもなくても、いつでも連絡してきてかわまない」
 そう言って手を放した。
 かばんを渡したけど翠は動かない。
 エレベーターが動くまで翠は動かないだろう。
 俺は翠の背を見送ることを断念し、エレベーターに乗り「閉」ボタンを押した。