光のもとでⅠ

 いつものようにコンシェルジュに迎えられるエントランスを抜けエレベーターに乗る。
 会話はない。
 けど、居心地の悪さも不安もない。
 気になるのは翠の体調くらい。
 九階に着くと、俺はエレベーターのドアを背で押さえるようにして立つ。
「携帯見せて」
 翠は開いている右手で携帯を取り出し俺に見せる。
「三十七度七分……」
 微熱の域を出た。
 あと少しで三十八度台。
「明日明後日はゆっくり休むから大丈夫」