光のもとでⅠ

 ――抱きしめたい、キスをしたい……。
 頭の中がそれだけで埋めつくされそうで、強制的に思考を遮断する。
「あと少しでマンションだから、もう少し頑張れ」
 手を引くと、翠は静かに従った。
 マンションを目前に、肩越しに坂道を振り返る。と、そこには今翠と歩いてきた道があった。
 俺はどこまで歩いてこれた?
 前方に視線を戻し、残りの坂道を見て思う。
 これから上る坂道――。
 俺はこの手をつないだままどこまで歩いていけるだろう。
 道は途絶えることなく続いているのだろうか。
 いや――道がなければ作るまで……。
 やっと掴むことができたこの手を俺は絶対に放したりしない。