光のもとでⅠ

 トマトのように、リンゴのように、そんな比喩じゃ追いつかない感じ。
 人体を構成する何かが蒸発するんじゃないかと思う域。
「唇が、何?」
 つないだ手を引き寄せ、自分の真正面に立たせる。
 今日三度目の至近距離――。
「なんでも、ない……」
 答えたあと、赤い顔のまま上目遣いで見られる。
 俺はその表情に無条件で煽られてしまう。
「そういう顔で見るな……。何を懇願されているのか勘違いしそうになる」
 勘違いするというよりは、衝動を抑えるのに必死。
 こういう衝動って男側にしかないものだろうか。