「司、遅い」
 その言葉に俺を振り返った人間たちが固まり、意味を解する。
 つまり、外に出た翠を追いかけて出ようとした人間を食い止めてくれていたのだろう。
「助かった」
 こんな人数に囲まれたら翠がどうなるか――。
 そんな想像は安易にできる。
 外へ出ると、翠は花壇の縁に座っていた。
「時間切れまであとどのくらいだろう……」
 自分の身体に訊いているのか、そんなことを口にした。