光のもとでⅠ

 このままずっと持っていたい気持ちを抑え、携帯を差し出した。
 翠はびっくりした顔をして動く気配がない。
 仕方ないから翠が手に持っていた俺の携帯を取り上げ、その手に翠の携帯を握らせた。
 翠は「ありがとう」と唇を動かす。
 俺も声を発することなく、「どういたしまして」と答えた。

 歌を歌っていたのは海斗と立花だった。
 ふたりで仲良くデュエットね……。
 なんとなしに思いつく。
「好きだとわかった途端に失恋」――これは海斗が相手なら当てはまる。
 そう思ったとき、翠が急に立ち上がった。