制服に着替え終わり、ふと弓道場の方向を見やる。
 本当は道場へ行くのが一番だが、あそこまで行くとなるとそれなりに時間がかかる。
 仕方なく、俺は図書室で射法八節をすることにした。
 もちろん、道着ではないし弓もない。
 ただ、決まった動作のひとつひとつを丁寧に反復するのみ。
 頭の中に道場のイメージはできているが、何か違うと思うのは――生じる音?
 普段「音」と言うものにそこまで拘りがあるわけではないが、道着の衣擦れの音を意外と気に入っていることに、今になって気づいた。