翠は微動だにせず俺を見ていた。
 が、これ以上の無言空間には俺が耐えられそうにない。
「でも、困らせたいわけじゃないから。俺も翠と変わらない。好きな相手には好きなやつがいる」
 俺は翠から少し離れ、自分のマントを外して翠の肩にかける。と、白と水色の衣装は闇色に包まれた。
「翠には翠らしくいてもらいたい」
 立ち上がり周囲の状況を確認してから、足元の翠に視線を戻した。
「もう少しそこにいろ。俺が表に出れば少しは注意を引ける。そしたら誰か迎えによこすから」
 翠の返事は聞かず、俺はその場を立ち去った。