でも、そんなことに満足していられる時間はきっと長くは続かない。
 ごく間近で並走ができるようになったら、次は交わることを望むだろう。
「頼られること」を目標としていたのに、それを得た途端にそれ以上を求めるようになったのがいい例。
 だが、並行が平行である限り、ふたつの線は決して交わらない。
「俺にとっての翠は……。一言でいうなら破天荒。予想だにしない行動に出られること多々で、おちおちしていられない。目を放したが最後――そんな感じ」
 どんな顔をして聞いているのか、と隣を見てみると、翠の顔は髪で隠れて見えなかった。
 たぶん泣いている。