翠は複雑そうな顔をしたままおどおどとしている。
「右手はこのまま。左手は俺の肩」
 翠は言われたとおり、俺の肩に手を置いた。
 それを確認してから自分の右手を翠の腰に添える。
 一瞬、身体がビクリとしたのは気のせいじゃない。
「つ、ツカサっ、せっかくだから好きな人を誘ったら?」
 それは俺の右手が原因か?
 それとも、やっぱり好きな男にこういう場を見られたくないから?
 この学園において、俺が踊っている相手を略奪しにきそうな人間がいるとは思えないが……。
 あぁ、そのくらいなら翠にもわかるのかもしれない。
 だからこそひとりになりたいと……?