それ以外の反応や言語での応答はなし。
「翠、返事」
 返事を急かすと翠は後ずさる。
「あっ、わ、私、ダンスなんて踊れないっ。踊ったことないものっ」
 大丈夫だから、と言葉を添えたいのに、俺の口からは「手」という言葉しか出てこない。
 当然ながら、翠に「え?」と首を傾げられる。
「手と身体を預けてくれたらそれでいい。あとは俺が誘導するままに動けばいいから」
「でもっ、足踏んじゃうかもしれないしっ」
「ワルツとは違うから安心していい。それに、踏まれても三回までなら許してやる」
 どこまでも俺らしい言葉を吐き散らかし、巨大な炎を囲む輪に加わった。
 結局、「大丈夫だから」なんて言葉はただの一度もかけられず――。