光のもとでⅠ

 三時を回り、翠たちが図書室へ戻ってくると、簾条が意味ありげな視線を投げてよこした。
 俺は適当なファイルを手に持ち書架へ向かう。
 簾条は書架に背を預け、待ち構えるように立っていた。
「言うまでもないとは思うけど、翠葉のこと少し気をつけてあげてほしいの」
 簾条がこんなことを言うからには何かあるのだろう。
「記憶の一部が戻ったみたいだけど、戻った部分がまずかったわ。思い出した箇所はあんたのインハイ予選の日。あの日の出来事はほとんど思い出せたみたい」
「それならさっき姉さんから聞いた」