『翠葉、二時すぎに起きて今はクラスに戻ってる』
『何があったのか訊いても……?』
『……インターハイの予選、司の弓道の試合の日のことを思い出したって言ってたわ。話している最中に倒れたっていうのが周りの人間の証言。その日にあったことは一通り思い出せたみたいだけど、ほかはまだみたいね』
 インハイ予選――あの日、翠は中学の同級生に二度絡まれた。
 よりによってなんでそんな日の記憶を思い出す?
 ――さっきの男。
 鎌田公一という名前が脳裏に浮かぶ。
 あの男が翠に直接害がないとしても、これ以上は関わらせたくない。