「だから」に続く言葉を言わせてほしかった。
 そんなことを知りもしない翠は嬉しそうに話を続ける。
「朝ね、登校してくるときに校舎向こうに藤山が見えて、きれいだなって思ってたの。だから、行ってみたくて……」
「……俺でよければ連れていくけど? じーさんの許可をもらわないと入れない場所もあるし」
 翠に言われるのではなく、自分から「一緒に行かないか?」と伝えたかった。
 結果、言えたことには言えたのだからいいじゃないか、と思う自分と、順序が逆じゃ今までと何も変わらない、と思う自分がいた。