表情に出ないように細心の注意を払い自己嫌悪に陥っていると、
「本当……?」
 こちらをうかがうような声が返された。
「こんなことで嘘をついても仕方ないだろ」
 翠の様子を見たところ、引かれてはいないようだった。
 こんなことにほっとしているようでは、この先が思いやられる。
 そんな自分を奮い立たせ、翠が食いつきそうな話題を口にした。
「それに、今なら藤山の紅葉もきれいな時期」
「本当っ!?」
「だから――」
「あ、うん。嘘つくことじゃないよね?」
 違う……。